セントウルS 京成杯AH

第25回セントウルS(GII)/第56回京成杯AH(GIII)

秋のビッグレースに向けて、東西の重要なステップレースが行われた日曜日であるが、例によって2鞍を振り返ろうと思う。
まずは西の、阪神で行われたセントウルステークスから。
勝ったのは、この夏に急激に力をつけた上がり馬・エーシンヴァーゴウであった。

先行してしぶとく抜けだした勝利は、田辺騎手を含めた陣営の執念の勝利を見た気がした。
ダッシャーゴーゴーやサンカルロにエーシンホワイティ、そして香港からやってきた本気度満点の香港GI馬・ラッキーナインに、降着ながらも4位入線で昨年に続いて存在感を肢示した同じく香港馬のグリーンバーディーなど、かなりのハイレベルのメンバーに入っての勝利は、まったくもって恐れ入った。
これで、同じく4歳牝馬のカレンチャンを大逆転に成功し、見事サマースプリントシリーズのチャンピオンとなった。

そして、何と言っても本番のスプリンターズステークスが本当に楽しみになってきた。
カレンチャンとの直接対決がまだないということもあり、これら牝馬2騎の本番での走りはいかにも楽しみである。
シリーズを2戦2勝で終えたカレンチャンは、運が悪かったとしかいいようがない。
この悔しさを、強敵相手の舞台にはなるが、GIの勲章奪取によって晴らしてもらいたいところだ。

香港のラッキーナインは、昨年のグリーンバーディーに続いて59kgでの2着。
これも昨年同様、本番では人気になるだろう。
本来の調子には少し遠かった人気のダッシャーゴーゴーは3着。
外から動いた手ごたえは突き抜けるかのような素晴らしいものだったから、これは叩かれての良化は必至という感じの3着。
得意の中山コースなら、前進の可能性大だろう。

サンカルロは-6kgの馬体で臨んできたが、どう見ても完調手前に映ったグリーンバーディーも捕らえることができず、実質は掲示板を死守したという程度の内容。
やはりこの距離だとスピード負けしてしまう。
最終週とは言え、今季の中山の馬場が異常に速いだけに、本番に向けてその点がどうか。
期待したエーシンリジルは一瞬先頭に立つシーンもあったが、最後は力負け。
この馬はもう一度仕切り直しだろう。

エーシンホワイティも、直線一気の脚質からの脱却に、いちおうは成功したものの、しかしスプリント路線でトップクラスが相手では、どうしてもスピード負けしてしまう。
サクラバクシンオーの子だから、距離はあまり伸びないほうがよいのは確かだろうが、昨日の競馬では、さらなる成長力が求められることを示した内容と言わなければならないだろう。


さえ、一方東では、開幕週の「超高速馬場」である中山でGIIIのハンデ戦が行われた。
秋競馬のスタートと言えば、もちろん京成杯オータムハンディキャップである。
勝ったのは、中山巧者の5歳・フィフスペトル。
てっきり重賞初制覇だとばかり思っていたが、この馬はデビュー2戦目で函館2歳ステークスを勝っていた。
ということは、この勝利が実に3年ぶりの重賞制覇ということになった。

そういうメモリアルレースでは、鞍上はやはりこの人・横山典弘騎手である。
前走は蛯名騎手とのコンビで逃げて快勝していたが、今度は速くなることを想定していた典弘ジョッキーの好判断で、中団よりも少し後方を追走から、直線で進出、着差以上に完勝の印象を与えた。

勝ち時計の1分31秒9というのは、とにかく中山の芝コースの馬場が速いということである程度想像できたが、フィフスペトルがそういう時計で走破するというのはちょっと想像できなかった。
キングカメハメハ産駒のパワーを、見事にスピードに変換しての勝利。
大けがで長い休みもあったが、しかしこれはいよいよ本格化した印象も強い。
この時計なら今後大いに楽しめそうだ。

2着のアプリコットフィズは、マイネルファルケ同様ここが「背水の陣」という印象でもあったが、私が期待したマイネルファルケがまたもやシンガリ負けを喫してしまったのと対照的に、2着でこそあったが、しかし立派な「復活」であった。
府中巧者の印象が強いが、中山の小回りコースで、しかも異常なほどの高速馬場こそこの馬のスピードと一瞬のキレが生きる舞台であった。
不利な外枠から勝ち馬をマークするような位置取りはいつもと同じような競馬であったが、ここから伸びるかというところで、ギリギリで良いころの走りを思い出した。

3着レインボーペガサスは、トップハンデが微妙にラスト1Fで影響したのか、前走のような力強さは見られなかった。しかし、時計は前走の新潟・関屋記念をコンマ4秒も上回っており、人気になったエアラフォンを2度とも破っているというのは、この馬もまた本来の力をようやく取り戻したと考えてまず間違いないだろう。
スケールある馬体から、これは久々にGI戦線にも乗ってもらいたいという思いは強い。

そして、本命に推して期待していたマイネルフォーグは、ハイペースの後方を追走、手ごたえ十分で直線に向いたが、インコースが完全に詰まってしまった。
しかし、あの展開ではインコースをつくのは悪くなかった。
昨日は運がなかったが、しかし今度は、もう少し時計のかかる馬場で逆転があるかもしれない。
もう一度穴候補として注目してみたい。