競馬予想ブログ

天国へ・・・そして、天国から~キストゥヘヴン(第53回京成杯AH)

いやぁ・・・とにかくこのところ忙しくて、なかなか「名馬列伝」の更新ができずにいた。
もはやこのコーナーをさぼって1カ月が経過してしまった・・・
しかし、気分も新たに秋競馬が始まったということで――というのはまったくのウソで、ごくごくシンプルに、少しだけ時間ができたので、今週行われる秋競馬のスタート・京成杯オータムハンデの歴代の勝ち馬から名馬を選んで、ここに改めてご紹介しようと思う。

個人的に3連単でそこそこの馬券を獲らせてもらったということで、おかげでそれ以降このレースが待ち遠しくて仕方ない体質になって現在に至っているわけだが(もちろん、夏競馬があまりにもニガテであるという体質による部分の比重もきわめて大きい)、そのレースとは、今から今からちょうど3年前にあたる、2008年に行われた第53回の京成杯AHである。
勝ち馬は、桜花賞馬のキストゥヘヴンであった。

アドマイヤベガを父に、そして母の父はノーザンテーストということで、日本競馬における成功の確率が最も高い「サンデーサイレンス系×ノーザンテースト系」という典型的な配合の牝馬であったキストゥヘヴンは、その鞍上に安藤勝己騎手を迎え、陣営やファンの期待に背かず桜花賞を勝ち、クラシックホースになった。

しかし、血統を別にすれば、このキストゥヘヴンという馬が特別エリートホースであったというわけではなかった。
というのも、2着に敗れたデビュー戦は4番人気、続く未勝利戦でも4番人気で2着、さすがに3戦目では堅実身を買われて1番人気に推されたもののまた2着、4戦目は勝ちきれなもどかしさが微妙に評価に影響を与え、2番人気ながらようやく未勝利を脱出した。
要するに、未勝利脱出まで4戦も要したのが、後の桜花賞馬のキストゥヘヴンであった。

ところがキストゥヘヴンは、この勝利をきっかけに、まるで馬が変わったかのような成長を遂げた。
2戦目はいきなり重賞のフラワーカップにぶつけ、6番に気の低評価ながら、横山典弘騎手の好騎乗もあり、見事優勝。
重賞初挑戦で初優勝を決めた勢いは、続く桜花賞でも衰えるところを知らなかった。
安藤勝己騎手とのコンビは2回目。
並みいる強豪の中では、非常に地味な存在に映ったキストゥヘヴンは6番人気の評価であった。

このときの圧倒的1番人気は、松田博資厩舎でサンデーサイレンス産駒のアドマイヤキッスと武豊のコンビであった。
この世代は、後にカワカミプリンセスが席巻することになるから、相当ハイレベルの世代であったと言える。

レースは、後方に控えたアドマイヤキッス・武豊を、さらに後方からマークするキストゥヘヴン・安藤勝己という形になり、しかしそのはるか前方に、けれんみのない逃げで人気を博したアサヒライジング、中団には、翌年ヴィクトリアマイルを勝つコイウタなど、力のある面々は2騎よりもはるか前に陣取る展開になった。

自身満々で抜けだした武豊・アドマイヤキッスを豪快に外から差し切ったキストゥへヴンの姿を目の当たりにし、私は目を覆った。
例によって、抜群の手ごたえでいやぁな予感を漂わせながら後方を進んでいた2騎の馬券など一切持っていなかったからである。

それにしても鮮やかであった。
デビューから4連敗を喫したが、そこから怒涛の3連勝で、どれも圧巻の競馬、これはオークスではカワカミプリンセスにとっては強敵が現れたと、私はこのときすでにオークスの勝利を確信していたカワカミプリンセスに思いをめぐらせていた。
この馬だけは気をつけなければならない、と。

しかし、こういう強烈な脚を使ってしまったあとの牝馬というのは、往々にしてその後苦しむものである。
このキストゥヘヴンもまたしかりであった。
その後よもやの11連敗。
内容的にも、アメリカにわたって4着に好走した遠征レースを除けば、クラシックホースとしてのプライドが引き裂かれるような内容のレースが多かった。

桜花賞制覇から2度の年明けを経て、しかしキストゥヘヴンはまだ現役競走馬であった。
そして、目に見えないような小さな変化であるが、キストゥヘヴンに少しだけ良化の兆しが見えた。
2008年の京都牝馬ステークスである。
このときの勝ち馬は、くしくも桜花賞でワンツーを決めたアドマイヤキッスであった。
キストゥヘヴンがあのころの闘志を思い出すには条件が整っていたのだ。

しかしその後、ライバル・アドマイヤキッスに悲劇がおよぶ。
疝痛の痛みに苦しんだアドマイヤキッスは馬房で暴れて骨折、かわいそうに、その短い命を思わぬ形で終えなければならなかったのだ。

キストゥヘヴンが復活を果たしたのは、その秋の京成杯AHである。
亡き父・アドマイヤベガへの想いを託したオーナーが小柄な牝馬に与えられた「キストゥヘヴン」という名にかけて、キストゥヘヴンは今度は自身の力で、天国に旅立った友への、丸2年以上も遠ざかっていた勝利のトロフィーに「友情のキス」を添えて、精いっぱいの想いを込めて走った。

そしてまた年が明け、引退レースとなった中山牝馬ステークス。
キストゥヘヴンは、いつもの豪快な追い込みではなく、前々で流れに乗って、重賞3勝目を手にした。
その姿は、どこかアドマイヤキッスの走りを彷彿とさせるものであった。

天国から、アドマイヤキッスはラストランを見事に飾った友に、優しく祝福のキスを贈った。

第56回京成杯AH(GIII)

秋競馬と言えば京成杯オータムハンデキャップであるが、今週の日曜中山のメインは、いよいよその京成杯AHが行われる。
ただでさえハンデ戦なのだから、波乱の要素はかなり大きいし、そこにきてこのレースは中山芝の外回りのマイル戦ということで、当然枠順が大きく着順にかかわる可能性が高いレースである。

開幕週、中山外回りのマイル戦・・・どの馬の陣営も、どうか内枠が当たりますようにと祈っていることだろう。
開幕週だから当然先行する馬が有利であることは間違いないが、しかしこのレースは、展開次第では追い込みが十分に決まることも決して少なくないレースである。
個人的に馬券を当てたからよく覚えているが、あの桜花賞馬・キストゥヘヴンは大外から豪快に差し切っていた。
もちろんそれ以外は基本的に中団より前にいる馬がここ数年では有利なのだが、展開に加え、メンバーの力関係次第ではそういう競馬も可能であることを頭に入れておいたほうがよいだろう。

しかし今年はというと、登録を見る限り実に力は接近しているという印象があり、ハンデ戦にしなくても十分混戦の様相を呈している。
秋競馬のスタートくらいはすっきり当てたいところであるが、しかし登録馬を見るだけで早くも苦戦しそうなメンバー構成に、どうやらなってしまいそうである。
ただ、それだけに予想する楽しさはこれまでの夏競馬にはないものがあり、いよいよ中央場所に戻ってきたなと実感されるようなレースである。

登録馬の中にも、「穴メーカー」が2~3頭いる関係で、一瞬弱気のムシも騒ぎ始めたものの、しかし彼らのおかげでまた闘志がわいてきた。
今年は気分よく大いに荒れていただこうではないか。

ここを使われてくるメンバーというと、それほど軽いハンデの馬は逆に「用無し」という印象もあり、それなりに斤量を背負わされていても、やはり実績はしっかりと認めるところから始めなければならないハンデ重賞である。
その意味では、夏のローカルハンデ戦とは少々違ったアプローチをしなければならない。
そのあたりの考え方の切り替えを素早くしないと、京成杯AHの的中はまずままならないだろう。

猶予は1週間。
夏競馬ボケのリハビリに励まなければなるまい。
今からでも、昨年以前のレースビデオを繰り返し見ておくことを強くおすすめする。

何はともあれ「秋競馬スタート」である。
頑張ろうではないか!

第25回セントウルS(GII)

スプリンターズステークスの施行時期が前倒しになったことにともない、とにかくいろいろと施行条件が変わってきたスプリント路線であるが、今週の日曜阪神のメイン・セントウルステークスもまたそんなレースのひとつである。
しかし、サマースプリントシリーズが創設された関係で、おそらくしばらくはこの時期のGIIという条件で行われることになるのだろう。
というのも、セントウルSは、サマースプリントシリーズの最終戦に組まれていることから、シリーズの覇を競う馬や陣営にとっては非常に重要なレースである。

今年の登録馬で言えば、エーシンヴァーゴウがそれに当たる。
ここで結果を残せばシリーズのチャンピオンに輝くことができるのだ。
しかし同じく4歳牝馬のカレンチャンが、先々週の札幌・キーンランドカップで強敵を破って重賞3連勝を決め、エーシンヴァーゴウにとっては、このセントウルステークスは負けられない一戦ということになる。

ところが、今開催の最終日には、中山競馬場でスプリンターズSが行われる関係で、当然ここはその大一番を目標にした実力馬がステップレースとして使われることになる。
今年で言えばサンカルロがその筆頭だろうし、先日阪神のCBC賞で見事復活優勝を飾ったダッシャーゴーゴーもまた、先を目指すにはここで凡走は許されない立場である。

しかも、ここは近年、香港からの「刺客」が、小手調べ的にこのレースを使われるからさらにレベルは高くなる。
何しろ、近年の日本馬と香港馬のスプリンターのレベルの違いは歴然である。
今年は、グリーンバーディーという刺客が昨年ここを59kgでダッシャーゴーゴーと僅差の2着という内容の競馬をしていた。
ということで、当然本番でも人気になったわけだが、今年もまたこのグリーンバーディーの名前が登録馬の中に見えた。
しかも今年は昨年よりも1kg軽い58kgで出走するということで、これはかなりの強敵ということになる。

また、今年の注目はこのグリーンバーディーではなく、もう1頭の騙馬でこちらは4歳のラッキーナインという馬のほう。
こちらはすでにクラシックマイルという香港GIを優勝しているために、斤量は59kgであるが、香港馬はとにかくしたたかである以上、これは警戒しなければならないだろう。

個人的には、本番の大混戦を期待して、こうした強力なメンバーをエーシンヴァーゴウが打ち破ってくれることを期待しているのだが、どうもそう簡単なことではなさそうである。
ただ、いずれにしてもステップレースながら激しい競馬が展開されそうなことはまず間違いないだろう。
そして、まさに見どころ満載のレースである。

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