展望 クラシック

2011年の展望~クラシック編

昨年末、来年の新3歳は少し気の毒だな、などと考えていた。
というのも、昨年の3歳世代(つまり、今年の4歳世代)のあまりのレベルの高さ、そして層の厚さのため、翌年の世代のレベルがかすんでしまうのではないかと、そんなふうに考えたからだ。
ところが、2歳戦を見ていて、そんな心配は無用かなという気持ちに、今はシフトしている。
もちろん、現3歳世代が昨年の世代のレベルや層の厚さをしのぐものであると言っているわけではない。
ただ、昨年のことを考えると、これはとてもではないがこんな世代はちょっと出ないぞ、という思いから、今年だってそこそこやれるのではないか、という考えに変わってきたことは明らかである。

その根拠となるのが、ブエナビスタと同じ松田博資厩舎の3歳牝馬・レーヴディソールの存在である。
この馬の走りは本物。
デビュー戦の勝ちがなかなかの評判を呼び、デイリー杯2歳ステークスはその評判が単なる「風評」ではないことを証明して見せたレースであった。
平均ペースではあったが、デビュー戦とは大きく異なるペースを後方追走から直線、こちらは牡馬の中でも評判の高かったアドマイヤサガスをあっという間に差し切ってしまったのだから、あれは衝撃であった。

そして今度は阪神ジュベナイルフィリーズで、当面のライバルと目されていた良血・ダンスファンタジアがかかりにかかってしまうほどの超スローペースを、同馬が外から一気に上がっていくところをまったく動じることなく自分のペースに徹したところなど、まさに競馬センスの塊である。
かといって、馬体的にはまだまだ幼さの残る子供そのものだから恐れ入る。
阪神JFは超スローだったから着差はわずかでも、内容的にはまったくの余裕の勝利であった。
これが成長した暁にはどれだけの馬になっているのか――そのあたりも踏まえて、おそらく無難に牝馬路線をたどるとは思うものの、個人的にはぜひとも「牡馬三冠ロード」をレーヴディソールには歩んでもらいたいと考えている。

そして、もうひとつの根拠。
JFで2着、3着に敗れていたホエールキャプチャとライステラスの存在。
この2頭のおかげで、レーヴディソール一色にもなりかねない牝馬戦線にかろうじて可能性の灯を燈してくれている。
確かにレーヴディソールとの差はあまりにも大きいが、特に秋以降になれば、その差はもっと詰まってくるかな、という印象もなくはない。
ホエールキャプチャは一瞬のキレと見上げた根性の持ち主で、これは大きな武器であり、ライステラスはこれからの成長が実に楽しみであり、距離伸びて良さが出そうな印象がある。

実は、これを書いているのがシンザン記念の前日であり、そのシンザン記念にはディープインパクト牝馬のドナウブルーが相当の器であるという評判であるが、これが明日好メンバーのシンザン記念を勝つようなことになれば、今年の牝馬クラシック戦線もまた非常に層が厚いということができるだけに、実は明日がとても楽しみである。

一方、近年完全に牝馬に気押されている男馬に関してだが、朝日杯を勝ったのがサクラバクシンオー産駒のグランプリボスであった。
完成度の高さで見事に2歳チャンピオンの座を射止めたわけだが、この馬もレースセンスは豊富であり、さすがにダービー、菊花賞といったスケールは感じさせないが、朝日杯と同じ皐月賞なら十分勝負になるという印象を持った。
朝日杯ではコース適性の差で完敗の形になったサダムパテックは、府中に変わればチャンスは大きく、「ダービーではこの馬から」と考えるファンも多いのではないかというくらい、あの東スポ杯2歳ステークスはインパクトが強かった。

そして、朝日杯組に限らず、いよいよディープインパクト産駒の台頭が牡馬クラシック戦線でも目立ってきているように感じる。
正直、当初なかなかディープ産駒が重賞を勝てずにいて、私もヤキモキしていたのだが、考えてみればディープインパクト自身も、2歳の終わりごろにデビューし、年明けに一気に素質が開花したのだった。
その成長過程を顧みれば、これから素晴らしい素質を受け継いだ産駒がどんどん台頭してくるというのもうなずける。
さすがにまだ「ディープ級」のインパクトをともなう産駒の出現は見ていないが、それでも、もしかしたらディープ産駒の別馬がそれぞれ「三冠」を制するような形の三冠サイアーにディープインパクトが輝く可能性は意外と高いのではないかと言う気もしているのだ。

いずれにしても、ディープインパクトにとって初年度産駒は上々のスタートを切ったと言えるし、これから先の牡馬クラシック戦線は、どうやらディープインパクト産駒が中心勢力を形成して展開していくのではないかと言う、そんな予感もある。

牝馬に比べれば、牡馬のほうが今後一気に台頭する余地は残されているという印象も強い。
ということで、世代間のレベルの高低をここで云々できるものではないが、それでも今世代の3歳勢もまた、昨年同様、決してレベルが低いとは言えないという思いである。
勢力図が今後どのように推移していくか、今から楽しみでならない。