阪神大賞典 天皇賞・春

第59回阪神大賞典(GII)

天皇賞・春に向けての重要なステップレースとして古くから注目されることになる阪神大賞典であるが、昨日のレースポイントのところでも触れたように、近年、世界的な規模で見たときに、マラソンレース自体が激減している傾向にある中、サンデーサイレンスをはじめとするアメリカのスピード血統が大量に入ってきた結果、我が国の「ステイヤー主義」のコンセプトは存続の危機にさらされているという状況が浮き彫りになってきている。

自然、この3000mの阪神大賞典も、かつての「天皇賞・春の有力馬」がステップにしていた歴史はおぼろげな記憶へと変貌しつつある。
波乱必至というのが近年の阪神大賞典(そして、天皇賞・春、菊花賞も)の通説となりつつもある。
かつて阪神大賞典は、およそ「馬券の妙味」には欠けていたレースであったが、すでに「名馬」の域に達していた馬たちが複数出走してきたことから「勝負」としてのダイナミズムは十分に堪能できるレースではあった。
これは、阪神大賞典が決まって少頭数となったからであった。
要するに、出走したところで勝てる望みがないという馬たちは出走してこなかったのである。

今年は14頭。当
然人気はトーセンジョーダン(7枠11番)ということになるだろうから、もしこれが頭をはずせば、この頭数なら早くもこの時点で「波乱」の可能性が極めて高いということになり、同時にトーセンジョーダンが頭を取ったとしても、近年の傾向からすれば、着穴狙いも十分成り立つレースである。

記憶では、昨年のアルゼンチン共和国杯でも本命にしたのだが、ジャングルポケット産駒のシグナリオ(8枠13番)にした。
父・ジャングルポケットは、典型的な中距離のタイプで、あまりスローに流れる長距離戦では少し足りない競馬が多かった印象だが、その息子であるシグナリオはまったく逆で、平均的流れるレースでは決め脚が足りないケースが多い。
長距離戦では父が一歩足りず、中距離戦では子が一歩足りないという不思議な父子だが、注目は母の父にあたるヌレイエフ。

実にさまざまなタイプの後継馬を送り出してきたヌレイエフであるが、基本的にはノーザンダンサーのスピードを伝えることが多いが、時としてタフなスタミナを伝えることがあるのがこのヌレイエフの血の特徴という印象がある。
シグナリオはどうやらそのタイプという気がする。
AR共和国杯のときにはトーセンジョーダンの決め手に屈した形になったが、それほど長距離が合うという印象がないトーセンジョーダンに対して、3000mの距離ならば互角に渡り合うシーンがあるかもしれないという期待を込めてみる。

相手は大穴のメイショウドンタク(4枠5番)。
この馬は昨年のダイヤモンドステークスや天皇賞・春でも重い印を打ったが、とにかくタフに流れる長距離戦でこそのタイプ。
前走の万葉ステークスではまったく精彩を欠いたが、あのレースは3000mのレースではなく、正味1000mのスプリント戦のようなレースになってしまった。
スローを先行してしぶとく粘りこむ従来の戦法がまったくとれず、あれでは勝負にならない。
タフな阪神外回りのコースなら、この馬のしぶとさは十分に生かせる。

単穴は、いい加減良くなってくると見ているゲシュタルト(5枠8番)。
前々走の日経新春杯を見てしまうと、やはり決め脚がない分、この馬も距離はさらに伸びたほうがよさそう。
体形はそれほどステイヤーというタイプではないが、決め手に欠けることを考えると、阪神外回りの3000mというのは非常に魅力。
ダービー4着の意地を見せてほしい。

こちらも意地を見せてほしいという意味ではゲシュタルト以上であるオウケンブルースリ(7枠12番)。
この馬にはまだ終わってほしくない。
例によって音無調教師のトーンは上がってこないが、菊花賞馬の意地を見せてほしい。

そしてもちろんトーセンジョーダン。
ただ、確かに厳しい流れのAR共和国杯を横綱相撲の好時計で優勝したことで底力は証明されたが、あのレースを見てしまうと、3000mという感じの走りではなかったように思う。
道中でリズムを崩してしまうことも、ひょっとしたらあるかもしれないという一抹の不安もある。
アッサリ勝たれてしまっても不思議はないが、敢えて押さえにとどめる。

そして、ここで結果が出なければいよいよ苦しくなってしまうトウカイトリック(4枠6番)の巻き返しにも警戒は必要。
海外遠征で少しリズムを崩してしまった印象があるから、近走の不振が力の衰えではないことを自ら証明してもらいたいレースでもある。
そして、距離が伸びて一気に良くなったコスモメドウ(2枠2番)はここが試金石。
長距離の松岡騎手は信頼できるから、相手は強いが意外と崩れは少ないという気もする。
そして、ダイヤモンドSの内容に見るべきものがあったキタサンアミーゴ(6枠9番)と安藤勝己騎手のコンビには再度注目したい。

◎ シグナリオ
〇 メイショウドンタク
▲ ゲシュタルト
△ オウケンブルースリ
△ トーセンジョーダン
△ トウカイトリック
△ コスモメドウ
△ キタサンアミーゴ