競馬 競走馬

ニッポンは負けない!~「がんばれ」(2)

完全な「娯楽」のカテゴリにある「競馬」のコラムを書いている私が、東日本の大震災に触れてコラムを書くことに対して、少なからず抵抗があった。
一昨日、昨日と、ほとんど仕事が手につかず、我ながら自らの容量の小ささに閉口している。
私は学習塾を運営している。
今年もまた新しい受験生がいる。
昨年、このコラムを担当して最初のころに、「競走馬」と「受験生」は似ているところがあるということに気づいて、「どっちもがんばれ!」というエールをこのコラムから贈った。

震災に立ち向かい、絶望の淵から再び立ち上がろうとしている被災者の方々や、救助、援助、復興に直接携わる人々、失意に打ちのめされている我々「ニッポン人」、そして自分自身に対しても、「がんばれ!」というエールを、いや、「一緒にがんばろう!」というエールを贈りたいと思っている。
もちろんこのエールは、競馬や受験といった、日常生活の中のちょっとしたイベントに対するエールとは違う。

大きな命、小さな命、さまざまな尊い命が数多く失われている中、私は「小さな命」に励まされた。
情けない大人だとは思うが、正直ずいぶん励まされた。
「命の大きさ」なんて、関係ないのだと学習した。
どれもみな「尊い命」なのだ。
学校で授業を受けていた生徒たちは地震のため教室から避難しなければならなかった。
「震度5強」という地震は私にとって初めての規模の大きさであったが、ということはもちろん子供たちにとっても初めての恐怖であったはずだ。
大人でさえあらゆる種類の恐怖には慣れていないのだから、中学生にとってこの地震がどれだけの恐怖であったのか、ちょっと計り知れない。

幸いにして建物倒壊や停電は起こらず、大きな混乱には至らなかったが、地震直後は通信機器が一切使えない状況になっていた。
その復旧がなされ、いきなり私の携帯が息を吹き返した。
メール着信があった。
見ると、「おい!大丈夫か!!」という、とても勇ましいエールが私に贈られていた。
私は思わず微笑んで、そして素直にありがたいという気持ちになった。
小学校1年生からずっと私の教室に通っている、今年受験生になる生徒からであった。

「私の生徒」というよりも、どちらかといえば「娘」に近い中学2年生であり、ほかの生徒と区別するつもりはないが、やはり激しい揺れの直後に私は真っ先に彼女の身を案じた。
だが、大人の分別が邪魔して、すぐにメールを送るということをしてやれなかった。
先にメールをもらってしまったことに小さからぬ後悔がある。
小さい身体で必死に恐怖と闘いながらも、不惑に静かに手を伸ばしている私の身を案じてくれていたのだから。

昨日テレビで「現地にいなくても、国民一人ひとりができることがあるはずだ」とコメンテーターが発言していた。
「国民の一人」として私ができることは、いくばくかの募金をすることと、停電の混乱を乗り超えることと、そして苦境に陥っているニッポンにエールを贈ることだけだ。
実際、被災されている方々のことを思えば、停電の混乱なんて微塵の苦労でもない。
子供にエールをもらい、それでやっと気がついた。
私にもできることがある、きっと・・・
できるだけの目いっぱいのことを、国民の一人としてしたい。

誰かが私の中で叫んでいる。
「行動しろ、そして発言しろ!」と・・・
私ができるただひとつのことは、発言すること――
だから、どうかこれを読んでいる競馬ファンの皆さん、競馬ファンではないけれど、たまたまこの文章をお読みいただいているみなさん。
被災した方々に、そして、被災地で活動している方々に、できる限りのエールを贈ろうではないか。

私が生まれるずっと昔、日本は死の淵から這い上がり、その後も天災や経済危機など、何度も何度も死地を踏み、そのたびごとに窮地を脱してきた。
菅首相もおっしゃっていたが、戦後最大の危機に瀕した私たちの国ニッポンは、今こそ立ち向かわなければならい。
私は「ニッポンは負けない!」と信じ、「ニッポンは負けない!」という言葉を、ニッポンに、そして日本人に贈りたい。
できることなら、この文章をお読みいただいて、賛同していただいている方がいれば、一緒にエールを贈っていただきたいと願っている。

ニッポン・は・負けない!