クイーンC エイダイクイン

B級名馬列伝#39~エイダイクイン(第33回クイーンC)

年が明けるとすぐに3歳馬となった若駒たちもいよいよクラシックへ向けての歩みが本格的になるわけだが、今週行われる府中のクイーンカップも桜花賞やオークスといった牝馬クラシックへ向けた重要なステップレースである。
なぜか同距離の桜花賞とはあまり縁がないレースとなって久しいが、そんなことばかり言っていると、軽視したときに限って好走するのが競馬の常だから、このレースの勝ち馬には要注意である。

そして、もう今から13年も前のクイーンCの話であることを確認してものすごく驚いているのだが、その1998年の勝ち馬・エイダイクインについて今日は語ろうと思う。
この馬も本当に思い出深い馬だ。
エイダイクインと言えば、何と言ってもメジロマックイーンの初年度産駒であり、当時そこそこ走っていたメジロマックイーンのファーストクロップの中でも、おそらく一番期待されていたのがこのエイダイクインではなかったかと思う。
父はもちろんであるが、どちらかと言えば母・ユキノサンライズから譲り受けた感も強い白っぽい芦毛のエイダイクインは、父よりもずっと早い時期から活躍し、メジロマックイーン産駒の最初の重賞勝ちをこのクイーンCで飾った。

あのときはうれしかった。まるで昨日のように感じる。
デビュー戦で2着、折り返しの新馬戦を勝った。
どちらのレースもなかなかの好内容であったものの、両親の適性からは及びもしないダートの1200m戦ということで、このあとどんな路線を歩むのか心配したものだ。
しかも勝ち上がりの昇級戦のダート1400m戦では9着と惨敗し、まさか距離不安があるのではないかと心配はさらに膨れ上がった。
しかし芝に変わった4戦目からはいよいよ芝の血統が目覚めての3連勝。
その3連勝目がクイーンCであった。

道中3番手から堂々と押し切っての圧勝だったから、このときはしびれた。
しかも、このとき圧倒的人気であったのが、後にNHKマイルカップを3着と好走するスギノキューティーであった。
そして、2着もクラシックと秋華賞ではすべて馬券に絡んだエアデジャヴーだったから、今にして思えばこのエイダイクインの潜在能力の高さは疑うべきもなかったのだ。
このときは、桜花賞さえ勝つことができれば2冠濃厚だと考えたほど胸躍るクラシックシーズンであった。

ところが、まさかの結果が待っていた。
桜花賞ではタマモクロス産駒のダンツシリウスに次ぐ2番人気に推されながら、レース中に骨折してしまい6着に敗退。
ということは、もちろんオークスに出走できるはずもなく、個人的にはまったく想像できないような結果に終わったエイダイクインの春のクラシックシーズンであった。

かなり重度の骨折であった。
エイダイクインが復帰したのがちょうど1年後のダービー卿チャレンジトロフィー。
このときのダービー卿ほどハラハラしたことはないと言っても過言ではなかった。
桜花賞までしか競馬を経験しないで、1年も休んでいきなり復帰初戦が牡牝混合のマイル重賞だったからだ。
どうか無事に、どうか無事に、どうか無事に、どうか無事に・・・と、延々と祈っていたためにレースを直視できなかったのを思い出す。

ブービー負けを喫し、やはり競走馬としての再出発は相当厳しいかと思われた次走の富士ステークスでは、同じ芦毛のレッドチリペッパーが優勝。
ここまではいい。
しかし2着は圧倒的人気のブロードアピール。
2番人気には、あのタイキシャトルを破ってスプリンターズステークスを制していたマイネルラヴが押されていた。
このレースでエイダイクインは2着のブロードアピールとハナ差の3着に敗れた。

敗れはしたが、内容がすごかった。
なぜなら、末脚自慢のブロードアピールの後方待機策はよくわかるが、エイダイクインは後方2番手の追走という信じられない位置取りから、あのブロードアピールを差し切るのではないかというものすごい末脚で追い込んできたからだ。

その後も中山牝馬ステークスで直線一気を決めてまたまたレッドチリペッパーの2着。
もう4歳時(旧年齢)の「先行押し切り」のエイダイクインの姿はなく、代わって「直線一気」の脚質に変化したエイダイクインがすっかり板についたレースであった。
ただ、そうした脚質から凡走することも多くなったことも事実である。
凡走しては好走するといった繰り返しであったが、それがエイダイクインの新たな魅力でもあった。

そして迎えたエリザベス女王杯。
桜花賞以来、実に2年半ぶりのGIの舞台であった。
このときにも、あの桜花賞と同じファレノプシスが先頭ゴールを果たし、フサイチエアデールに次いでエイダイクインは3着に食い込み、私にいくばくかのワイド馬券をプレゼントしてくれた。
このときももちろん後方一気の競馬で、白い馬体が京都の大外を突っ込んでくる姿は非常に美しかった。
4着に入ったトゥザヴィクトリーは翌年の女王杯を勝ち、ドバイワールドカップでも2着と好走したことは知られる通りであり、これに先着したのはエイダイクインにとっても大きな勲章である。

現在は生まれ故郷で繁殖牝馬として活躍している。

エイダイクイン(牝16)・・・父・メジロマックイーン、母・ユキノサンライズ、その父・ホリスキー
主な勝ち鞍・成績・・・クイーンC(GIII)