高松宮記念 キンシャサノキセキ

第40回高松宮記念(GI)/第57回マーチS(GIII)

マーチステークスのほうは、やはりマコトスパルビエロが自力に勝った。圧勝と言っていい内容。
重賞にしてはそれほどペースが上がらなかったのも、
距離が足りないマコトスパルビエロに大きなプラスをもたらした。
このメンバーでこのペースなら、追走も非常に楽であった。
好位に取りついて直線ではトップハンデをまったく感じさせない走りで楽勝。
ひきつづき次走以降も注目である。

期待していたナニハトモアレが2着。
中団あたりの馬群の中でじっと我慢していたが、勝ち馬を別とすれば目立った脚で伸びており、
前走の鮮やかな内容がフロックではないことが形の上では証明された。
重賞でも力が通用したのは収穫。

人気のモンテクリスエスは、大外というのもあったが、ちょっと人気しすぎていた気がする。
ただ、これも重賞で通用することが示される内容の4着であり、
芝の長距離重賞では頭打ちという感じがしないでもなかったことを考えると、こちらも収穫があった。

さて、高松宮記念。
ついに、という感じで、キンシャサノキセキが大願を成就した。
アテにできなかった若い時分から、
フジキセキ産駒の中でも傑出した能力の断片をここかしこに見ることができただけに、
7歳になってようやくそれが結実し、
昔から注目していただけに個人的にも非常にうれしいキンシャサノキセキの戴冠であった。

このペースでも引っ張りきれない手ごたえで中団内に待機。
直線ではもうガマンしきれないという勢いで早目先頭から押し切った。
勝ち時計の1分8秒6は予想された時計であり、このタイムでの優勝は、
キンシャサノキセキが単なるスピード馬ではなく、
底力も併せ持った真に強い競走馬であることを同時に示している。
7歳でもこれから先が本当に楽しみになった。

2着のビービーガルダンはまたハナ差の2着。
3着以下も大接戦だっただけに、最後のひと伸びは素晴らしいと言うべきものであるが、
ビービーガルダンにとっては、スプリント戦でも近くてなかなか遠い1着のゴールだ。
これで左回りの不安も払拭されたと言っていいだろう。
今回も「右回りなら・・・」と言えるようなラストの伸びであった。

3着のエーシンフォワードは力をつけた。
阪急杯の勝ちっぷりを見て、少なくとも今期の中京の馬場はかなりのプラスになると思って、
キンシャサよりもこちらを上位に見たのだが、これからはキンシャサノキセキ同様、
日本の短距離界を背負っていく立場になったと言っていい。
マイルはさすがに少し長い印象があるが、「秋には・・・」そんな期待が大きくなった。

4着のサンカルロも、キンシャサノキセキとコンマ1秒差、
そしてアルティマトゥーレにも先着したということで、
1F短いと思われた1200mをみごとにこなして見せた。
ただし、サンカルロにとっては、今期の中京の馬場が大きく味方した可能性も否めない。
次走以降、時計がどんどん速くなる馬場のスプリント戦で過剰に人気するようなら、
もしかしたら危ないかもしれない。1400mベストという印象は今回も残った。

そして、ここがラストランとなったアルティマトゥーレは、出負けが痛かった。
最後の伸びは上位4頭にまったく見劣らなかっただけに悔やまれる。
互角のスタートだったら・・・そんな悔いが残るが、ここまでよく頑張ったとは思う。
今後は繁殖牝馬としてどんな子供を出すかとても楽しみである。

例年にくらべてあまりにも悪い馬場がポイントとなり、
とんでもない大波乱の予感があった今年の高松宮記念であったが、意外と堅い決着となった。
馬場が荒れるのは、暮れの福島でよく見られる傾向で、
確かに馬場悪化によって到底不可能と思われる馬が大穴をあけることも少なくないのも事実だが、
内も外も均等に悪くなってしまうと、意外とこうした「力勝負」になってしまうものだ。
昨年のダービーでも、内も外もないどろどろの不良馬場では、
結局底力にあふれる2頭の決着となったように、
今回も、スピードだけではなく、パワーも兼ね備えた馬が上位を独占した。

そう考えると、馬場悪化にわずかな望みを見て期待したグランプリエンゼルとファイングレインは、
結果的には「総合力」で見劣ってしまった格好だ。
それに、グランプリエンゼルに関しては、どう考えてもスプリント戦では忙しすぎる。
マイル戦で人気を落とすようなら、そして、多少馬場が渋るようなら、
今後もマークは必要であると疑っていない。

ファイングレインも、不調が長く、今回も着順的にはすぐれないものであったが、
上位とはそれほど差がなく、これならまだ見限れない。
こちらも時計のかかる馬場であれば、引き続き注目である。

スピード競馬の高松宮記念だけに、馬場が悪いのは決して喜ばしいことではないのだが、
展開の紛れによって穴馬が浮上するよりは納得できる内容であったとは思う。
ただ、マーチSも合わせて、どちらもこの配当で決まっては、私の出番はない。