日経賞 毎日杯

第58回日経賞(GII)/第57回毎日杯(GIII)

勝ち馬から9着のマイネルアワグラスまでがコンマ5秒差以内に収まる大接戦。
まるでハンデ戦のような激しいゴール前になった今年の日経賞。

しかし、ゴール前は大混戦であっても、天皇賞馬のマイネルキッツの道中の行きっぷりは、
他馬とはまったく違っていた。
今回は軽視したマイネルキッツ、道中後方の内々でじっとガマンしていたその走りを見ながら「ああ・・・マイネルにやられる・・・」と半ばあきらめなければならないほどの抜群の手ごたえであった。
完全復活。
もう間違いなくベストの状態に戻った。
こちらとしては、「日経賞を凡走して天皇賞で人気薄になり、そこを狙って・・・」という青写真を描いていたのだが、この走りでは天皇賞では間違いなく上位人気を形成してしまうだろう。

2着以下はもう横一線。
注目されたのは10カ月ぶりの出走となったロジユニヴァースであるが、
こちらは大きく馬体重を増やしての出走、
しかも大外ということで多少引っかかったところがあったように見えなくもなかったが、
なんとかガマンは利いていた。
6着と掲示板を外しはしたものの、内容的には「合格」だろう。
ただ、次走がいきなり天皇賞となると、日経賞後の息の入りにもよるが、
今日の走りを見る限りは距離的に微妙という気がする。

2着は9歳馬となって最初の出走であったエアシェイディ。有馬記念3着の力はダテではなかった。
若い時分にはマイル~1800mあたりを最も得意分野としていた印象が強かったエアシェイディであるが、年齢を重ねるごとに徐々に距離延長に対応し、今なら天皇賞でも勝負になるのでは・・・と思われるくらいの走りを見せたと言っていいだろう。
厩舎スタッフの優れた手腕にも恐れ入るには違いないが、それにしても本当に頭の下がる思いだ。
今後どういった路線を歩むことになるのか、これでまた楽しみが増えた。
とにかく大事に使われてきている馬だから、おそらく春は天皇賞路線ではないだろうが、
どこを使うにしろ次走が注目である。

3着トーセンクラウンは、時計を要する馬場に適性があったにせよ、この3着は立派のひと言。
中山記念の際には「この勝利で決して展望が開けたわけではない」などと余計なことを口走ってしまったが、たいへん失礼なことを言ってしまったと後悔している。
オペラハウス産駒の成長力を考えてみれば、「このあと大きなところを狙えて不思議はない」と訂正する。
血統的には天皇賞も十分視野に入るだろう。
馬場が渋ればかなりやれるのではないかと思われる。


毎日杯のほうは、道中引っかかる馬が半数以上であったように、超スローの直線勝負となった。
このスローだから、安藤勝己騎手のダノンシャンティもいつもより前目の、
ちょうど中団からの競馬になった。
上がりの脚は2着の共同通信杯につづく33秒台の切れを見せ、
手ごわいライバルをねじ伏せる競馬になった。
力強さを増し、先がますます楽しめそうだ。

スプリングSを2着したゲシュタルトに先着した実績のあるミッキードリームは、
展開が向いたにせよ、価値ある2着であった。
賞金を加算することはできたが、今年のハイレベルの皐月賞の出走争いでは、
ギリギリ出走可能というところだろう。

ダノンシャンティが勝ち、このミッキードリームが2着したことで、スプリングS組の1、2着馬の評価もまた上がることになる。

3着のリルダヴァルは、骨折明けで久々の競馬、そして、超スローということで、
道中はかなり行きたがっていた。
直線までだれも動かず、「ヨーイ・ドン!」になってしまっては、
前半行きたがったロスが最後に響くのは当然のこと。
それでもほとんど差のない3着、しかも、差し返すような根性も見られ、
力はかなりのものがあることも認識で来た。
ただ、この結果により、皐月賞はほぼアウト。
ベルーサ同様ダービー一本ということになるだろうが、
こういうタイプはダービーでかえって怖い気がする。

人気のルーラーシップは、このスローの展開だからあまりにも出遅れが痛かった。
その分がそのまま上位との差になってしまった。
こちらも事実上皐月賞はアウト。
そう考えると、重複になるが、あまりにも痛い出遅れであった。

期待していたミッションモードは、弥生賞よりはいくぶん競馬になったものの、
こういったヨーイ・ドンの競馬では分が悪かった。
距離的にももう少し長いほうがいいだろう。

直線の攻防で、今年もまた傷ましい事故が起こってしまった。
毎日杯ということで、とにかく全馬全騎手が無事にと祈っていたのだが、
その祈りもむなしいものになってしまった。

少なくとも、桜花賞と皐月賞では武豊騎手の姿を見ることはできないだろう。
診断の結果次第ではあるが、あれだけ激しい落馬だと、
もしかしたら天皇賞、そしてダービーも・・・というイヤな予感もある。
意識がしっかりしているということ自体、奇跡のようなものだ。
不幸中の幸いと言っていいはずだ。
早期復帰を願いたいが、頭を強打しているだけに、あわてずゆっくり復帰を目指してほしい。

そして、将来を嘱望されたザタイキが・・・本当にかわいそうなことになってしまった。
無念すぎる。