第145回天皇賞・春(GI)
天皇賞である。
注目のオルフェーヴルは、すでにご存知のとおり大外枠に入った。
オルフェーヴルがいろいろな意味であまりにも注目されてしまうため、他の馬たちを「注目馬」として挙げることさえはばかられるような今年の天皇賞・春であるが、いちおう人気になりそうな組ということで挙げていくと、ウインバリアシオンと武豊が6枠11番、トーセンジョーダンと岩田康成が8枠16番、ヒルノダムールと藤田伸二が7枠15番、そしてギュスターヴクライと蛯名正義が4枠8番ということになった。
今年の天皇賞のテーマは、「平常心」だろう。
送り出すスタッフ、そして乗るジョッキーが平常心でいられるとは思えないが、オルフェーヴル自身は意外と平常心でいらそうな予感はある。
おそらく簡単には内に入れさせてはもらえないだろうが、池添騎手ができるだけ折り合いに努め、オルフェーヴルを説得すれば、オルフェーヴルはちゃんと理解してくれると私は考えることにした。
オルフェーヴル、馬券の中心である。
平常心といえば、馬券を買う人間もまた平常心で臨みたいところである。
特に、オルフェーヴルのファンにとっては私も含めてそれは非常に難しいことであるが、そもそも馬券の――しかも、天皇賞の――検討をする際に、仮にも四冠馬に対して「まっすぐ走れるのか?」もないもんである。
平常心――レースポイントのところでは少し肩に力が入ってしまったが、いつも通りのスタイルで予想したいと思う。
本命はギュスターヴクライ。
人気的に3~4番人気あたりに落ち着きそうな気がしているのだが、期待のファビラスラフイン産駒が一番大好きなレースに出走するということで、成長した姿をしっかりとこの目に焼き付けたいという思いである。
力ではオルフェーヴルにかなわない可能性が極めて高いわけだが、他力本願ではなく、距離適性を前面に出して、直線、オルフェーヴルと叩きあってもらえたとするならば、結果はどうあれ私はうれしい。
相手はオルフェーヴル。
前走は「凱旋門賞を意識した競馬」であった。
これが最大の敗因である。
天皇賞の前哨戦では天皇賞を勝つための競馬をするべきであった。
だから、一番の問題は「あの場面」ではなく、スタート後に控えようとしなかったことである。
本質はそこだと私は考えている。
もちろん「凱旋門賞」という意味においては、前走の阪神大賞典は直接的な意味でマイナスだったのだろう。
ただ、実質オルフェーヴルが失ったものは何もない。
陣営もジョッキーも、「新たなチャレンジ」に失敗しただけである。
つまり、「凱旋門賞仕様のオルフェーヴル」を手に入れられなかっただけであり、「四冠馬・オルフェーヴル」であることは何もかわらないのである。
思えば、はじめは「失敗」を繰り返し、そしてそれを克服しつつ偉大な名馬にまでのぼりつめた馬である。
今回も、またそうした「成長」を見せてくれると私は信じる。
大方の予想通り、私も「まともに走れば勝つ」という意見に賛成である。
四冠馬の走りを取り戻してほしい。
今回はそれだけである。
無事にゴールインできさえすれば、その瞬間「五冠馬」とないみっている可能性は高い。
ただ、池添騎手にはあまり後続をちぎってもらいたくない。
今年に限らず波乱含みの天皇賞・春だから、本当なら究極の穴馬を単穴評価にしたいところではあるが、今年はもうここからは押さえである。
筆頭はトウカイトリック(1枠2番)、これで7年連続の天皇賞・春出走となる。
たいへんな大記録である。
ただ、これはそのくらい長距離適性があることの裏返しであり、常識的には買えなくても、このレースだけは特別である。
そしてオルフェーヴルと極めて近い配合のフェイトフルウォー(7枠13番)もよくなっている可能性が高い。
母方の血の印象から受ける距離適性は、オルフェーヴル以上である。
それからジャガーメイル(3枠5番)、ヒルノダムールの天皇賞馬2騎は当然おさえなければならない。
そして、立場が一気に楽になるのがローズキングダム(7枠14番)である。
有馬記念と大阪杯、私が2戦続けて本命にして、2戦ともかかって終わりという競馬であったが、そろそろ折り合いそうな気がする。
ただ、枠はオルフェーヴル以上に「外枠がイヤだなぁ・・・」と思えるだけに、この点を後藤騎手がどう乗るかにも注目したい。
乗り方次第では今回に限り、あまりにもスローになったときこの馬が一番「一発」の可能性があるのではないかという気がしている。
もちろんウインバリアシオンの動向にも注目しなければならない。
どこでオルフェーヴルを撹乱しに行くのか、武豊騎手の動きに注目である。
阪神大賞典を終えての陣営の、「オルフェーヴルに疲れはない」というコメントに私はひどく衝撃を受けたのだが、正直いってそんなことはあり得ないと思っている。
その部分だけが唯一の不安である。
だからオルフェーヴルにはできるだけダメージが残らない競馬をしてもらいたい。
そして阪神大賞典同様、ギュスターヴクライには「どこまで迫れるか」という無欲のファイトを期待したい。
◎ ギュスターヴクライ
〇 オルフェーヴル
△ トウカイトリック
△ ローズキングダム
△ ジャガーメイル
△ ヒルノダムール
△ ウインバリアシオン
第19回テレビ東京杯青葉賞(GⅡ・ダービートライアル)
ダービートライアルの青葉賞である。もちろん、本番とまったく同じ、府中の芝2400m戦である。
今週は開幕2週目ということで、馬場状態は問題ない。
「問題ない」というのは、開幕週や2週目あたりはとにかく高速でインコースしかダメという馬場(おそらく今年は京都がそのクチ)ではないということも含めて、である。
先週は、特に後半は多少雨の影響を受けたかもしれないけれど、内外の馬場差がない、比較的フェアな馬場状態であったと言えると思う。
それに、驚くような高速決着もなかったのがより好感が持てる。
ただ、内外の有利不利がない以上、どうしても内枠が有利になるはず。
人気面ではおそらく前走の弥生賞が不完全燃焼で、しかもおそらく府中のほうが全然合いそうなフェノーメノ(4枠7番)ということになるだろう。
ステイゴールド産駒のフェノーメノ、BMSがメジロマックイーンであれだけ走るのだから、母方の血がデインヒルに替わればもっと走りそうな気もなんとなくするのだが、可能性としてはフェノーメノがゴールドシップより上ということもあるから、この馬は人気によらず注目しなければならないだろう。
今年の青葉賞は例年以上にレベルが高い印象で、ダービーでも十分やれると考えるフェノーメノであっても、ここで権利を獲るのはそれほど簡単ではない可能性もあるか・・・という気も少しするのだが、人気面でこれを追いかけるとなると、スプリングステークスや皐月賞でも崩れなかった藤沢厩舎のサトノギャラント(3枠5番)が当面の相手候補になりそう。
横山典弘騎手というと、ロジユニヴァースを除いても、ダービーではシブい活躍を見せるジョッキーだから、ここで権利を獲るとなると本番は楽しみになる。
さらには連闘、というよりも「中6日」といったほうがあてはまる感もある、ハーツクライ産駒のカポーティスター(7枠13番)、前走500万特別の新緑賞はまったく力が違うところを見せて大楽勝、流れは超スローだったから連闘でもそれほどダメージは心配なさそう。
そして阪神外回りの芝2400m戦を快勝のヤマニンファラオ(8枠16番)は、2戦目の若駒ステークスでワールドエースとハナ差の3着があるから評価は高まりそう。
あとは前走中山芝2200mの山吹賞を逃げて33.3秒の上がりでまとめたエタンダール(6枠12番)も差のない人気になるか。
そして、ベストディールが勝った京成杯で1番人気、その前のホープフルステークスではフェノーメノに完勝の内容であったアドマイヤブルー(2枠3番)がこれに続く・・・といった感じだろうか。
展開的にビービージャパンあたりが主導権を握ることになるのだろうか。
印象としてまだ脚質が定まっていない組ということもあり、何が行くにしても、特に前半はスローの可能性が極めて高い。
ただ、力がある好メンバーがそろった今年の青葉賞は、好位勢も早目にスパートするケースも考えられ、ダービートライアルらしいハイレベルなレースになるという願望も込めたい。
本命は、ベールドインパクトが勝ったすみれステークス以来となる芦毛のクランモンタナにした。
好枠の2番枠で勇気100倍である。
皐月賞馬・キャプテントゥーレ(父・アグネスタキオン)を兄に持つ良血のディープインパクト産駒ということで、トライアルはもうあまりディープ産駒に逆らうのはやめようかという気も少ししていたのだが、ここはその流れに従うことにする。
といっても、これは先にも触れたメンバーと比べれば人気は「その次」くらいになるだろうから、馬券的な妙味はある。
ディープインパクト産駒は今のところこういう距離で実績はないが、しかしいずれ走る馬が出てくるのはわかりきっていることで、その「初めて」がこのタイミングでも驚けないかな、という気がしている。
絶好の馬場状態で、上と同様先行できる機動力があるから、あまり人気しない先行馬で前半スローになるのであれば、クランモンタナにとって展開が有利になるのではないかという読みにする。
ディープインパクト産駒の芦毛・・・ゴールドシップとワールドエースを足して2で割ったような能力の持ち主ということはないだろうか?
たぶんそんなことはないだろうけれど、ここは期待したい。
相手は、これもクランモンタナ同様それほどの人気薄という感じではおそらくないが、タムロトップステイ(4枠8番)という馬にちょっと注目している。
この馬はステイゴールド産駒と思われそうな名前だが、しかしダイワメジャー産駒。
そして「タムロ」さんの馬ということで何となく九州産のイメージがあるが、これは北海道産である。
なぜそんなことを言うのかというと、この馬、実は「メジロ牧場」で生産された馬なのである。
ということは当然、オルフェーヴルやゴールドシップと同じくアサマユリの血をひく一族の出であり、ここにきて俄然注目を集めるようになった血統背景ではある。
前走は阪神の芝2400m戦の重馬場を勝ち、その前は毎日杯であわやのシーンがあったマウントシャスタとも同タイムの結果が残っているから、成長次第では大きいところを獲れる可能性を秘めているのではないか。
ここも「ステイ×メジロ」の奇跡を見せてもらいたい(ちょと違うけど・・・)。
単穴は素直にフェノーメノ。
ここでは力が違うという競馬になる可能性は高いと思う。
押さえはヤマニンファラオ、エタンダール、ミルドリーム(8枠15番)、カポーティスター、藤沢厩舎では最内枠のジャングルクルーズのほうを上に見たい。
たぶんサトノギャラとも押さえることになると思うが、いちおうここまでとする。
◎ クランモンタナ
〇 タムロトップステイ
▲ フェノーメノ
△ ヤマニンファラオ
△ エタンダール
△ ミルドリーム
△ カポーティスター
△ ジャングルクルーズ
名優~メジロマックイーン(第103回、第105回天皇賞・春)
今週のメインは京都競馬場で行われる天皇賞・春である。
昨年は久々にCMにも登場した「名優」のマックイーンであったが、JRAとしては今年のライスシャワーと昨年のメジロマックイーンの登場順が「逆だったなぁ・・・」と嘆いているかもしれない。
何と言っても今年の天皇賞の主役(CMの、ではなくレースの)はオルフェーヴルであり、その身体には偉大な祖父・メジロマックイーンの血が流れているのだから。
ついでに「メジロマックイーン」のイメージなんてこれっぽちもない皐月賞までゴールドシップという強い孫が優勝してしまったのだから、天国のマックイーンは仲良しだったサンデーサイレンスを呼んでヘベレケになるまで祝杯をあげたことだろう。
このコラムを書き始めた当初から、天皇賞の週にはメジロマックイーンを名馬列伝の主役に書こうと考えていたが、今日ようやく書くことができる。
メジロマックイーンが天皇賞を初めて勝ったのが、現在でいう4歳時であった。
春秋トータルで103回目の天皇賞であった。
あのときには「親子3代天皇賞制覇」という偉業がかかっていた。
これも私が大好きであったミスターアダムスや、ライバルのメジロライアンをまったく寄せ付けずに完勝、これが最初の「偉業達成」の瞬間であった。
翌年の天皇賞も新たな偉業に挑戦するメジロマックーンの姿があった。
無敗の2冠馬・トウカイテイオーとの「対決」のムードは最高潮に達し、このときすでに熱狂的なメジロマックイーンのファンであった私は、ひたすら固唾を呑んでレースを見守った。
マックイーンは私の心配をよそに、まったく何事もなかったようにこれを制し、「勝ち抜け制度(一度優勝した馬がその後天皇賞に出走することができない精度)」の関係でそれ以前にはあり得なかった「天皇賞・春連覇」を史上初めて達成したのである。
その後も骨折を克服して宝塚記念を優勝し、引退レースとなった京都大賞典を優勝したあかつきには、世界の競馬史上初めて、獲得賞金が10億円を超えるという「3つ目の偉業」を達成したのである。
3歳~6歳までの4年間で毎年1つずつGI勝利を重ねてきたこともそうなら、引退レースがとんでもないレコード勝ちであったこともそうであろう。
ネガティヴなファクターでは、「絶対」とされた3回目の天皇賞・春でライスシャワーに敗れたこともそうなら、4歳時の秋の天皇賞での降着事件もそう。
本当にいろいろな部分で競馬ファンを楽しませ、悲しませ、ハラハラさせる波乱に富んだ競走生涯を送ったメジロマックイーンだからこそ、ファンは彼を「芦毛の名優」と呼ぶのである。
もちろん、その由来が「大脱走」のスティーヴ=マックイーンに由来することは知られるところだが、ハリウッドの偉大な俳優も、この名馬の名優ぶりを知ったらさすがに顔色を失くしたのではないかと思う。
現役を引退したメジロマックイーンは、今度は種牡馬として非常に大きな期待をかけられ、第二の人生をスタートした。
私は出走する産駒すべてに注目してきたが、注目するたびに現実の厳しさというものを改めて痛感させられ、何度となく絶望的な気分にさせられたものである。
友人が「マックイーンの子は全然走らねぇなぁ・・・」と言った。
苦し紛れの私は「マックイーン産駒は牝馬が走る!子はクラシックを獲れないかもしれないけれど、孫がやってくれる!(メジロ)シャープの子を見てろ!(メジロ)サンドラの子を見てろ!(エイダイ)クインの子を見てろよ!」と反論した。
ただ、オリエンタルアートやポイントフラッグの子を見てろよ、とは言わなかった。
でも、無論そんなのは単なる強がりである。
断わっておくが、本当にグランプリホースやクラシックホースはもちろん、ましてや三冠馬が出るなんてまったく考えずに(誰だってそうだろう・・・)言った言葉である。
ただ、少なくともこの発言が現在の私の馬券の的中運を大きく削り取っていることは間違いない。
それに、このやりとりがあったのはまだエイダイクインが現役の当時だった気がする・・・
いずれにしても、死してなおメジロマックイーンは名優であり続けている。
これが本当にうれしく、幸せなことである。
その子供がほとんど世に出なかったメジロアサマの孫であるという血統背景もそうなら、世界的規模でほとんど残されていない血の継承者であったこともそうである。
これほど波乱に富んだ生涯を送ったサラブレッドもそういない。
ホクトスルタンの現状を見る限り、父系の血はおそらく途絶えてしまうことになるだろうが、しかし「メジロマックイーンの血」は、今にわかに強い活力を滾らせ始めている。
メジロマックイーン――
あなたの愛する孫は、まあいろいろ言われてはいるけれど、本当のスーパーホースです。
どうか今週の天皇賞は、天国からその背中を押してあげてください。
長い長い道のりの天皇賞だから、もしかしたらまた横道に逸れようとするかもしれないけれど、そんなときには「見えざる手」で、どうか人馬をお守りください。
マックイーンの、ティターンの、アサマの「奇跡の血」が、そして特に牝系はシェリル、さらにはアサマユリにまでさかのぼる「メジロの血」が通う三冠馬が、いよいよ久々に注目が集まる「天皇賞・春」の舞台に立つ。
私は、これまでずっとメジロマックイーンの血を信じ続けたように、天皇賞でもオルフェーヴルを信じようと思う。
