七夕賞 ハンデ

七夕賞の名馬たち

個人的な話になるが、年間通じても五指に入るほど大好きなレースであるのが、例年は福島競馬場で行わるのが通例となっているハンデ重賞の七夕賞である。
先日のレースポイントのところでも触れたが、とにかく七夕賞というと、私が馬券を買い始めた大学生のころには「荒れるレース」の絶頂期という時代であったくらいであり、当然すでに「1番人気26連敗記録」の更新真っ盛りという時代でもあった。

基本的に、一般的に「カタイ」とされるレースでさえ何としてでも「波乱」に仕立てたくなってしまうのが私の本質的な馬券の考え方であり、注目馬が注目された通りに強い競馬でレースを終えてしまうと、ヒートアップした周囲の歓喜の盛り上がりの輪に加わることもできず、ひとりさびしく疎外感を噛みしめることも決して少なくないのだが、しかしこの七夕賞は、何しろ最初から「波乱になる」と誰もが口をそろえる競馬である。
これが好きにならずにはいられないに決まっているではないか。

そこで、今回は、いつもの「名馬列伝(あるいはB級・・・)」という形ではなく、これまでずっと私に夢を与え続けてきてくれた、いや、むしろ絶望的な気分にどっぷりと浸からせてくれた名馬たちをかいつまんでご紹介しようと思うのだ。
今年は「七夕賞 in 中山競馬場」という非常に特殊なシチュエーションだけに、このケースでも七夕賞の「波乱伝説」は不滅であることを願いつつ、過去の勝ち馬を振り返る。

まずは第29回(1992年)の勝ち馬であるツインターボ。
厳密にはツインターボが七夕賞を勝ったという記憶はないのだが、調べてみるとこの馬も七夕賞の勝ち馬であった。
おそらくあまりにもあのオールカマーの逃げの印象が強すぎるせいかもしれないが、とにかくツインターボが七夕賞を逃げ切った(ですよね?)記憶がまったくないのだ。
しかし福島の馬場を風を切って先頭ゴールするツインターボの勇姿を思い浮かべることはそれほど難しいことではない。
福島と言えば、中舘騎手の活躍は毎年約束されているようなものだから、ツインターボが七夕賞を勝つのはやはり当然という気がする。

そして翌年の第30回は、非常にシブい活躍を見せたニフティダンサーであった。
福島の「小回り、平坦、時計のかかる馬場」という三拍子そろった条件でこそ、このニフティダンサーの能力がすべて生かされるのだ。
そんな難しい馬であったが、しぶとく伸びる末脚はいつになっても色褪せることはない。
ニフティダンサーと言えば、竹原啓二騎手とは本当に名コンビであった。
現在でこそ「竹原」というと、ボクシングの元世界チャンピオンの竹原慎二氏が有名であるが、私にとって「竹原」というと、いぶし銀ファイターのニフティダンサーのいぶし銀ジョッキー・竹原啓二なのである。

そして、だいぶ昔に「B級」のコーナーにご登場いただいたフジヤマケンザンは、ニフティダンサーの翌年の第31回の勝ち馬であった。
58.5kgの斤量でこの七夕賞を制していた。
とにかくいろいろな距離、コース、馬場状態、そして海外で、そしてそして、非常に重い斤量を背負って戦い続けた寡黙なファイターである印象が強かったフジヤマケンザンであるが、いくつも重賞を制していながら、なぜかこの七夕賞の優勝こそフジヤマケンザンにとって一番似合う勝利であったという気がしてならない。

そして少し時代が進んだ2000年の第36回は、ダンスインザダークのあの菊花賞でフサイチコンコルドに次いで対抗視して以来ずっと応援し続けてきたロングカイウンが、このときは実に52kgの優勝であった。
この馬も足元が順調ではなかっただけに、それでも苦しみながら頑張り続けて、やっと苦労が報われたという思いが強く、先頭ゴールの瞬間には不覚にも涙しそうになった七夕賞の勝利であった。
もちろんこのときはロングカイウン本命。
しかし、2着に逃げ粘ったケイエムチェイサーを持っておらず、本当に涙した苦い思い出でもある。

2002年の第38回は、本当に七夕当日に行われたレースであったが、このときのイーグルカフェも不調からの脱却に成功したレースであった。
しかしそこはさすがにGI馬。
七夕賞の「超久々」の勝利をきっかけとして、その後行われるジャパンカップダートを優勝してしまうのだから、これは本当に恐れ入った。
私の中では「エライ馬」の代表格である。

そしてその3年後、運命のときはついにやってきた。
このころになると誰もが「今年の1番人気は何か?」といううわさがレース前ここかしこできかれるという、本当に不思議なレースであった。
しかし、2005年の第41回で「1番人気」に推されていたダイワレイダースが、長く続いた七夕賞の「人気馬不振」の歴史にピリオドを打つことになったのである。

その後は、現在もなお現役でがんばっているミヤビランベリの連覇など、コース巧者の活躍が目立つ七夕賞であるが、今年、中山で行われる七夕賞は、どんな名馬が誕生するのか、今から楽しみである。