ドリームジャーニー 引退

The dream is over・・・~ドリームジャーニー引退に寄せる

ドリームジャーニー(牡7・父・ステイゴールド、母・オリエンタルアート、母の父・メジロマックイーン)が、宝塚記念10着を最後に引退、種牡馬になることが決定した。
この馬には、デビュー以来並々ならぬ思い入れで共に戦ってきたという思いが強く、彼が引退するにあたって、感慨もひとしおである。
そこで、ドリームジャーニーの引退に寄せて、引退の餞としたいと思う。

ドリームジャーニーにどうしてこれほどまでに肩入れしたかと言えば、それは私が敬愛して止まなかったメジロマックイーンの血を引いているからであり、そしてまた父・ステイゴールドも現役時代から大好きであったということも合わせて、私にとってはかけがえのない「スターホース」であった。
そして、馬込みに入れると隠れてまったく見えなくなってしまうほどの小さな馬体を目いっぱいに使って、とにかく歩幅が小さい分、他馬の1.5倍くらいにも見える細かい脚の回転で目が覚めるような鋭い末脚を繰り出すのが、若いころのドリームジャーニーのトレードマークのようなものであった。

どちらも大器晩成型であったステイゴールドとメジロマックイーンの血をひくドリームジャーニーが、まさか朝日杯フューチュリティステークスの舞台で先頭ゴールインを果たすとは思わなかった。
いい加減にしたらどうだと自嘲しながらも、まだよくわからない2歳戦のチャンピオン決定戦では、そこそこ人気になっていたドリームジャーニーがらみの馬券を買い、カワカミプリンセスの悲劇的なエリザベス女王杯降着による的中に次いで、この年2回目の万馬券的中をプレゼントしてくれたのであった。

そして、そのときに主戦を務めていた、蛯名正義騎手のあのコメントは最高であった。「ポスト・ディープインパクト」という目で誰もが新世代のチャンピオンを探そうと躍起になっていたときの朝日杯でもあり、それを慮ってか、あるいはディープインパクトのように、小柄ながらも大成してほしいという願いを込めてかはわからなかったが、少し冗談めかして「軽くとびましたね・・・」と、ベテランらしい味のある勝利ジョッキーインタビューであった。

そして、クラシック・・・さすがにクラシックを勝つには、ドリームジャーニーにはあまりにもスケールが乏しかった。
中には「早熟説」を唱える競馬仲間もいたが、バカバカしい、この血統で早熟なはずがないだろうと、私は一笑に付したが、早熟ではないにしても、これからどんどん強い馬と戦う上で、やはりこの小さな馬体ではとてもではないが歯が立たないのではないかという一抹の不安も、正直言えば、大いにあった。

しかし、これを大きく裏切ってくれたのが、4歳夏の小倉記念で見せてくれた、やはり父と祖父から受け継いだたぐいまれな成長力であった。
かつての最後方待機から直線で一気に差し切る先方から、序盤は後方に控え、徐々にポジションをあげ、勝負どころで一気にスパートをかける「まくり」の戦法に切り替わったのだ。
これはまさしくメジロマックイーンが長距離戦で見せたあの戦法であった。
見た目はまったく似ていなかったが・・・
しかし、続く朝日チャレンジカップでもさらに強気の競馬で、「ここで走る馬ではない」という確たる印象を私に与えた。

これが、その翌年の宝塚記念でついに現実のものとなった。
前年の有馬記念4着と前走の天皇賞3着で、古馬になってもGI級であることが証明され、内回りの舞台でついに、その身体からは想像できないような大きな大きな花を咲かせてしまったのだ。
あれは本当にうれしかった。
この世代にはとてつもなく強い牝馬2騎がいて、このドリームジャーニーや、同期のメジロマックイーン産駒・ホクトスルタンなど牡馬勢は「レベルが低い」とされてきたが、ドリームジャーニーがその根拠のない風評を見事に覆してくれたのだ。
その意味では、小さなドリームジャーニーが本当に大きな仕事をしたものだと再認識させられる。

有馬記念は女王ブエナビスタを差し切るという、おそらく最初で最後の「奇跡」を我々ファンに見せつけ、驚かせた。
ブエナビスタが前を捕らえられないことは多々あるが、後ろから来た馬に差されるのは、おそらくあの一戦だけであろう。
展開を読み切った上で私はこのドリームジャーニーを切ったのだが、それでいて勝たれてしまったのだから、これは仕方がなかった。
このときドリームジャーニーは、私が想像していた以上にはるかに強くなっていた。
馬券は悔しい思いをしたが、しかしこれは本当にうれしいことであった。

そして、次にドリームジャーニーに用意された舞台は、もちろん今度はサイアーとしての戦いの舞台である。
ステイゴールドの、サンデーサイレンスの、そしてメジロマックイーンの血の新たな継承者として、いずれ弟のオルフェーヴルとともに、その戦いに挑む日がやってくるのだろう。
またもや大きな仕事を、どうしたって期待せずにはいられない。
ひとつの夢は終わりを告げたが、また新しい夢は、ここから始まる。
がんばれ、ドリームジャーニー!