グランプリボス フランケル

ボス、出陣・・・

「名馬誕生」の瞬間を何度となく目にしてきたNHKマイルカップであるが、今年は亡きサクラバクシンオーにささげる息子の完ぺきな、そして感動的な優勝となった。
今年の勝ち馬は、サクラバクシンオー産駒のグランプリボス。
2歳チャンピオンにしてNHKマイルCの勝ち馬だから、グランプリボスが世代の最強マイラーである確率は非常に高い。
そのグランプリボスが、いよいよ「世界征服」に向けて第一歩を踏み出す。

海外遠征を敢行すれば何でもかんでも判で押したように「世界征服」というのはイヤであるが、しかし、今回挑戦するイギリスのGI・セントジェームズパレスステークスを勝てば、まさにこれは「世界征服」に値する大きなレースである。
もちろんレースの大きさだけではない。
出走メンバーがとにかくすごいのだ。

地元イギリスをはじめとしたヨーロッパ各国のトップマイラーが集うレースだから、どうしたってレースのレベルは高くなるに決まっているが、しかし今年の注目は何と言っても「世界王者」の呼び声がすでに高まっているフランケルと言うイギリス馬がいるというのが楽しい。
フランケルはサドラーズウェルズ直仔のガリレオの産駒で、母の父はデインヒル。
今年この「ガリレオ×デインヒル」の配合の馬たちがヨーロッパのクラシック戦線を席巻していると言っても過言ではないくらい、ヨーロッパでは「旬」となる血統だ。

デビュー以来6戦全勝のフランケル。
しかしそのレースぶりもまた圧巻である。
追い込んだかと思えば先行から押し切って見せ、そうかと思えば今度は、前走の2000ギニーでは逃げて6馬身差の圧勝を余裕で飾ってしまうくらいだから、これはちょっとやそっとのものでは倒すことができない。
本物のチャンピオンである。
しかも、2000ギニー優勝直後からダービー回避を名言し、こちらセントジェームズパレスS一本に絞って出走してくるわけだから、本気度も非常に高く、だからこそ、もしグランプリボスがこのフランケルを倒すようなことがあれば、これはもう世界的注目が、日本が生んだサクラバクシンオーの子・グランプリボスに集まると言っても過言ではないのだ。

セントジェームズパレスSは今月14日の火曜日に行われるということで、ずっと温めていたこのネタをここで出そうと考えたわけである。
いよいよ、日本の「ボス」が出陣である。

イギリスの馬場は、ご存知の通り深い洋芝のタフなコース設定であるため、マイルの勝ち時計は1分40秒近くもかかることが珍しくない。
日本の馬場とは5~10秒近くも違うわけだから、グランプリボスにとっては完全アウェーである。
だからこそ余計にここを勝てば・・・そんな思いが募るのだ。

私は今年、チューリップ賞をレーヴディソールが圧勝した際、このフランケルという馬について少し触れているが、このときには、「レーヴディソールがエプソムダービーでフランケルと激突することを夢見る」という趣旨のことを書いたはずである。
レーヴディソールは戦線離脱を余儀なくされ、フランケルもダービーはハナから頭になかったわけだから、そんなビッグマッチが実現するはずもなかったのだが、しかし、レーヴディソールと比べても「格下」のグランプリボスが、敵地のマイルの舞台で敵将の首を獲れば、これは日本の競馬のレベルが、そして、今年はそれほど叫ばれていない世代のレベルが実は半端ではなく高かったということが同時に示されるのである。
しかも、その頂点にはメジロマックイーンの血をひくオルフェーヴルがいるわけだから、私としてもここで指をくわえてただグランプリボスのレースを観戦するというわけにはいかなかったのだ。

グランプリボスがフランケルを破るとすると、これは馬場の克服が絶対条件である。
日本の超高速馬場で行われたNHKマイルCを、歴代でも上位の高速時計で完勝し、イギリスのタフな馬場で行われるマイル戦でも勝つようなことがあれば、これはもう単なる「GI馬」をはるかに通り越して、あのスノーフェアリー級の「スーパーホース」としてグランプリボスが蘇るのである。

グリーンチャンネルではセントジェームズパレスSのレースの模様が放映されるというが、残念何がら我が家にはそんな環境は整っておらず、せいぜいグランプリボスがフランケルと叩き合ってこれを破る映像を妄想できるくらいのものである。
しかし、そんな妄想も悪くはない。
グリーンチャンネルを視聴できるファンにはそんな大一番を、私の分まで是非ご覧いただきたいものである。

頑張れ、ボス!・・・
いや、このいい方は少しおかしいか。
もとい(「山さん」になったつもりで)、

――頑張ってください、ボス・・・