大阪杯 ダービー卿CT

第55回産経大阪杯(GII)/第43回ダービー卿CT(GIII)

日曜も前日に続いて阪神で2重賞が行われた。
天皇賞・春に、安田記念に、宝塚記念に、そして海外にと目標を定めて各陣営がステップレースとしてはもったいないくらいの豪華なメンバーであった産経大阪杯から振り返ろうと思う。

斤量の関係で1番人気に支持された重賞未勝利にして「2勝馬」であったヒルノダムールが、1分57秒8というコースレコードで重賞初勝利を収めた。
本来であればこの大阪杯で重賞初制覇なのだから、手放しで褒め称え、天皇賞や宝塚記念の有力候補として注目しなければならないところだが、なんと言ってもそこはヒルノダムール、過信は禁物とまずは言わなければならない。
むしろ、伏兵のダークシャドウの頑張りのほうがずっと褒め称えられて当然の内容であり、比較的カタイ決着となることが多い大阪杯としては、波乱を演出した。

そして、そこに絡んだのがやはり福永騎手ということで、この人はすごい。
これはこのあとの「ダービー卿チャレンジトロフィー」のレース回顧のところで触れるが、とにかくまさに「驚愕」の活躍である。
ただ、それを差し引いても、ダンスインザダーク産駒のダークシャドウがこの先少しいいところがあるかもしれない。

3着エイシンフラッシュは59kgを背負って少し復調の兆しが見えた。
昨年のダービー馬、この馬が古馬中長距離路線で存在感を取り戻せば、これはますますこの路線が面白くなり、層もますます厚くなる。
ダノンシャンティも、59kgで復調のきっかけとなる4着、しかも、あの驚愕のNHKマイルカップで見せた追い込みの形をしっかりとることができたのが収穫だろう。
ただ、この大阪杯の結果からイギリス遠征が結論付けられるということだったから、それは果たしてどうなるか、少し心配である。

しかしながら、どうやらブエナビスタが参戦するとされている安田記念に出走するようなことがあれば、それはそれで楽しみは増す。
個人的な考えを言えば、ブエナビスタだろうと誰だろうと、NHKマイルのあの脚をもう一度使えたなら、ダノンシャンティに差されない者はないと確信している。
正直言って、今回もあの衝撃に近い形を期待したのだが・・・
似たような力関係のメンバーだったから、やはり59kgはいかにも厳しかったというべきだろう。


そして、毎年波乱のダービー卿CTのほうは、まずは昨年の安田記念の覇者・ショウワモダンが復活の兆しを見せたことについて。
これまでいろいろな意見を目にし、耳にしてきたが、やはり圧倒的に多かった意見は「ショウワモダンの安田記念はフロックに過ぎない」というものであった。

結論から言ってしまうと、私は――こんなことを言ってしまうと笑われてしまうかもしれないが――「ショウワモダンは近年まれに見る名マイラーの資質を持った馬」というのが正直な思いである。
安田記念で馬券を獲らせてもらったから、というわけではない。
いや、もしかしたらそうかもしれないが、それでもいい。
とにかく、近年まれに見るあれだけのハイペースを早め早めに追いかけて前をとらえて後ろを完封するというのは、誰にでもできるというものではない。
もちろん今日も馬券に絡むことはままならなかったが、一瞬「これは!」という手ごたえがあったことは、今後も夢を見せてもらうに十分な内容であった。

勝ったブリッツェンは、柴田善臣騎手が絶妙なペースを刻み、ハンデ差をついてギリギリ残った。
とはいえ、絶好調の人馬(=ライブコンサートと福永騎手)をハナだけ残したのだから、ブリッツェン自身のがんばりはもとより、善臣ジョッキーのベテランの味が存分に生かされたと言っていいだろう。

それにしても――繰り返しになるが――福永騎手はすごい。
先週土日の重賞成績は1着(1人気)、1着(10人気)、2着(8人気)、2着(2人気)で、2着はどちらもハナ差だから、まさに「神がかり的な活躍」と言っていいだろう。
人気馬でも穴馬でもしっかり持ってくるのは、かの岡部騎手の晩年の活躍を再現するかのような活躍である。
私は彼の父であり、天才ジョッキーの名をほしいままにした福永洋一騎手のことはよく知らないが、もしかしたら彼はやはりそうした優れた遺伝子をしっかり受け継いでいるのではないかという気がする。
そして、大きな大きな、これまでにない夢を乗せてこれから戦うはずであったクラシックを思い、その悔しさがここに表れたのではないかという気もする。

3着キョウエイストームは本当に力をつけている。
無理に外を回らなかった蛯名騎手の好騎乗もあったが、カーブが緩い阪神の外回りであれだけの競馬は力の証ととるべきだろう。
この競馬ができるなら、出走さえできれば安田記念でも楽しみはある。
他では、これから得意の季節になってくるダイシングロウが長い長い不調期を脱出する気配があったので、次走以降は要注意だろう。