安田記念 珍馬名

馬名についての考察(2)~珍馬名編

もちろんまだ安田記念、そしてもう少しすれば宝塚記念をはじめとする大レースが残ってはいるが、史上空前のハイレベルを見たダービーも無事終了したということで、すこぉーしだけ気が抜けたこともあり、ここですこぉーしだけ肩の荷を下ろしておもしろいお話をしようと思う。

馬名の中には思わず吹き出してしまう、あるいは大笑いしてしまうような馬名も少なからずある。
先日はウオッカ号の名前を間違えて表記してしまうという失態をお詫びする意味を込めて「馬名についての考察」というタイトルで文章を書いたが、今回は、そういったおかしな馬名、いわゆる「珍馬名」についてリラックスしながらお話してみたいと思う。

最近でこそそれほど目立たなくなった(というか、そのオカシサに多少なりとも抗体ができた)が、一般に言われるところの「珍馬名」というのは、おもしろいというのはもちろんであるが、標準的な馬名の馬に比べて、妙な愛着がおこり、しかもどことなく物悲しさを漂わせるから不思議だ。
競馬に歴史があるように、そんな妙な縁に彩られた珍馬名の馬にも歴史がある。

おそらく世界的規模で見て最も古い珍馬名として、知っている競馬ファンも多いと思うのだが、日本にも大きな影響を今なお及ぼしているサイアーラインの出発点であるノーザンダンサーの祖先に「ポテイトーズ」という牡馬がいたのだが、この馬、もともとは「Potato(じゃがいも・発音は複数形)」であるはずだったのが、日本で言うところの、いわゆる調教厩務員にあたる人が、Potatoのスペルがわからずに、Potoooooooo(oが8個で、「エイトOs」)とその飼い桶に記し、その馬主がそれをおもしろがってそのまま正式登録したというなかなか粋な計らいで、結局そのままPotoooooooo(ポテイトーズ・血統表にはPot-8-Osと表記されることが多い)という名になってしまったというエピソードがある。

おそらく日本では実現しなさそうなエピソードだけに、競馬発祥のイギリスにおけるエピソードにはなかなか奥深いものがあると感じたものだ。

しかし日本の珍馬名にもおもしろいものはたくさんある。
最近はそれほど変わった名前がなくなってしまったが(もしやネタ切れ?)、かつては「マチカネ」の冠号の馬というのはほぼ例外なく珍名であった。
マチカネコンニチハ、マチカネスキヤネン、マチカネオイデヤス、マチカネテナモンヤなど、思わず吹き出してしまうような名前ばかりで、マチカネさんのところの馬がデビューするというだけで非常に楽しみであった。

中でも個人的に極め付けだったのが「マチカネコンチキチ」だ。
初めて聞いたときは大爆笑してしまった。

マチカネさんの馬と言えば、菊花賞を勝ったマチカネフクキタルをはじめとして、クラシックでも上位に食い込んでいたマチカネタンホイザやAJCC、アルゼンチン共和国杯を勝ったマチカネキンノホシ、同じくアルゼンチン共和国杯をレコード勝ちしたマチカネアレグロなどがいるにもかかわらず、どうしてもこちらの珍名馬のほうの記憶が勝ってしまうのは何とも不思議だ。

そして、最近では「マチカネ超え」を果たしたような感もあるのが「小田切有一氏の持ち馬」である。
こちらは「マチカネ」のような冠号は見られないものの、あの特徴ある水玉模様のような勝負服を見るだけで、「お、あれはなんていう名前だろう・・・」という、ある種の色眼鏡で見てしまう。
傑作だったのはなんといっても「オジサンオジサン」だろう。
初めて実況を聞いた時には、場内アナウンサーが気でも違ったんじゃないかと思ったくらい驚いた。
「さあ、外をついてオジサンオジサン!オジサンオジサン!」なんてやられれば、知らない人ならだれだって驚く。

そのほかにもカミサンコワイ、キヲウエタオトコ、イヤダイヤダなど、「え?」と思ってしまう珍馬名が非常に印象的である。
個人的に一番好きだったのが、キーン産駒の外国産馬・ヒコーキグモだ。
これは重賞勝ちもあり、つい応援してしまって、馬券も的中したことがある。
先行力が武器の快速馬であった。

他には、メジロマックイーン産駒で、デビュー勝ちを収めたヒカッテルという名前の栗毛馬がその響きがなんとも心地よかった。
しかし残念ながらそのデビュー戦1戦のみで引退を余儀なくされてしまった。

それと、小田切氏の持ち馬ではなくても、なかなかすばらしい珍馬名の馬もいた。
波乱を演出しまくった牝馬で、ユメノトビラという馬がいた。
名牝シンコウラブリイなどと同じくらいの世代であったと記憶している。
「名は体を表す」とはよく言ったもので、本当にこの牝馬・夢の扉を開いて万馬券をずいぶんとふるまっていた太っ腹の牝馬であった。

あとは明石家さんま氏が名付け親であるとされる「シャチョマンユウキ」なんていうのも初めて聞いたときにはずいぶんとおったまげたものだ。
思わず勝負服を確認(小田切氏の馬かと思った)したほどだ。

他にもかつては天皇賞・秋で5着に入る激走を見せた牝馬・ポジーなんていうのもなんとなく名前だけで好きになってしまったこともある。
名前はポニーっぽいけれど、見た目はごくごく普通のふっくら見せる牝馬らしい牝馬だった。
ポジーの場合、名前もそうだが、その末脚の鋭さはまさに一級品であり、その印象が強く残っている。

みんな今頃どうしているんだろう・・・元気にしてるのかなぁ・・・