ダービー エイシンフラッシュ

第77回日本ダービー観戦記

今年のダービーはエイシンフラッシュがとても強い競馬で優勝、この「頂上決戦」を勝利したことによって、文字通り世代のチャンピオン、そして、このハイレベルの世代トップであれば、当然世代を超越したチャンピオンである可能性も非常に大きくなった・・・

さてみなさん、今年のダービーを見て私は素直な気持ちでその感想を文字に表してみたのだが、何か異論はあるだろうか・・・

私の周囲の競馬ファンや、競馬評論家の方々のダービーの感想が、なんとなく「おめでとう!エイシンフラッシュ!おめでとう、ウチパクさん!」というものからは程遠いような印象が残っているのだ・・・
私の友人知人に対してであればいざしらず、世に名高い競馬評論家の方々を相手にして競馬の分野でケンカを売るようなマネは絶対にしないし、よしんば売ったところで私にかなうはずもない。
秋の中山開催に出走する未勝利馬がディープインパクトに挑戦するようなものだ。

ただ、それにしてもだ。
それにしても、あまりにも「みんなが待ちに待った特別な日」を終えての感想が、勝者をたたえるという基本的なスタンスを忘れてしまっているのではないかという印象がどうしても残ってしまうのだ。

ダービー直前まで言われていた今年の世代の評価は、ダービーというたった1つのレースを境に急激に冷え込んだものになってしまった気がする。
確かにダービーは特別なレースだ。
しかし、ダービーたった1レースで今年の評価に対する口調がガラリ一変するということに対しては「少し違うんじゃないの?」という率直な疑問が残ってしまうのだ。
確かに、昨年の極悪馬場を除けば年々スピード化する傾向にあるダービーの勝ち時計ではあるが、時計が遅いから「思ったほどハイレベルの世代ではない」と言ってしまうのはあまりに乱暴であるという気がしてならない。
だって、戦前まで「史上最高のメンバー」とまで謳われたダービーなのだから。

ダービーデーの最終レースの目黒記念も、同じような距離で同じようなペースで流れたレースであったが、そして確かに、特に後半の6F~8Fのラップは目黒記念のほうが流れとしてはダービーよりも多少なりとも厳しい(時計的に速いという意味で、時期は異なっていたが・・・)ラップではあったが、ラスト3Fの上がりの脚を比較すれば、今年のダービーのレースレベルと、古馬のGIIというグレードで伝統ある目黒記念のレースレベルの差は歴然である。
はるかにダービーのほうが高いレベルであったと言える。

上がりの脚が33秒台の馬は7頭と11頭。
頭数の違いはあれ、目黒記念とダービーそれぞれについて、である。
目黒記念では34秒1で上がったイケドラゴンが逃げ粘ったが、ダービーでは33秒台で上がってきた馬でも、ふたけた着順にならざるをえないほどの厳しさであった。
もちろん、上がりの脚が速ければレベルが高いと言いたいわけではない。
この2レースが同じ日に、そして同じような流れになったからそう言えるのである。
3歳春の時期に、歴戦の古馬のオープンクラス(少なくともGIIのレースであったという意味で)、しかも多くの馬が56kg以下であったということを考えれば当然のことだ。

もちろんこれが「今年の世代がハイレベル」という根拠としてはあまりにも乏しいものであるのはよくわかる。
ただ、上位に入線を果たした馬が「みんな距離が短いほうがいいタイプの馬」であるとは一概に言いきれない部分があるということだけは言いたいのだ。
もちろん、2着のローズキングダムにしろ5着のルーラーシップにしろ、確かにそういったタイプではあるが、「みんな」ではない。
特別なダービーのレース後に、そんないい加減なコメントを公共の電波を通して流してしまうのは、がんばった馬たちに対して、そして、このダービーを目標にして目いっぱい仕上げてきた陣営に対してあまりにも失礼であるという気がしてならない。

もちろん、この世代がどれだけのレベルであるのかがはっきりするのは、古馬とガチンコで対決するときが来るまではわからない。
しかしそれは今年の世代に限ったことではない。
超スローの流れで芝の2400mとは思えないような上がりの時計になったことで懐疑的になるのはよくわかるが、ダービーという特別なレースの勝ち馬や、掲示板に載った馬たちは、私のような素人モノカキでからではなく、競馬に通じた多くの人々に称えられるべきだと思うのだ。

競馬にはいろいろな楽しみ方があるのは事実だが、どうしてダービーが特別な日であるのかを考えれば、当然上位の馬たちは、そして陣営はみな称えられるべきだ。
あたかもレースのレベルを測定するために特別であるかのような競馬評論家諸氏のコメントには少々がっかりさせられた。
せっかくの「競馬の祭典」であったのに・・・そして「史上最高のメンバー」であったのに・・・

これを悔しさに置き換えて、勝ったエイシンフラッシュをはじめとするダービー上位馬には、どうか秋に「リベンジ」を果たしてもらいたい。
やっぱりダービー上位組は強かったのだ、と・・・
そして、ここで引き合いにだした目黒記念上位組にも、個人的にやはり今後の活躍を期待したい。