儚い夢~トウカイポイント(第76回中山記念)
今週の日曜中山のメインは、春を運ぶ伝統の中山記念、古馬中距離別定戦である。
このレースは実にさまざまなタイプの勝ち馬を輩出してきたが、今回ご紹介する名馬は、実にさまざまな意味で特異性を備えた、非常に印象深い思い出の名馬である。
今からちょうど10年前に遡ることになるが、76回目の中山記念を優勝し、後にマイルチャンピオンシップも優勝してGIホースになったトウカイポイントである。
トウカイポイントは父・トウカイテイオー、母の父・リアルシャダイという、どちらかといえば中長距離に適性がありそうな血統の馬でありながら、勝ったGIは「マイルCS」というのがまずはその特異性を示していると言えるだろう。
普通で考えるなら、この血統で中山記念を制したのであれば、さあ次は天皇賞・春に向けてどこを使うのか・・・という流れになるのが自然だと思うのだが、しかし、トウカイポイントは重賞初制覇の中山記念を優勝した次走に、府中の中距離オープン・メトロポリタンステークス(天皇賞の前の週)を選択したのだった。
もちろん、普通であれば天皇賞・春という選択は十分考えられたのだろうが、しかしこのトウカイポイントの場合、残念ながらはじめからその可能性さえなかったのである。
つまり、トウカイポイントは天皇賞への出走権を持っていなかったのである。
というのも、当時天皇賞・春の出走資格は「4歳以上オープン、牡牝、内国産馬」というものであったからである。
もちろんこのときのトウカイポイントはすでに6歳、しかも父はトウカイテイオーということで、内国産馬どころか今では懐かしい「父内国産馬」であったにもかかわらず、その出走資格が与えられなかったのである。
すなわち、トウカイポイントは残念ながら牡でも牝でもなかったのである・・・
ちなみに、現在の天皇賞・春は、外国産馬も騙馬も出走可能になっているので、念のため付け加えておく。
ただ、このトウカイポイントが去勢された背景には、たいへんな「気性難」があったということだから、もしこのとき彼に出走資格があったとしても、陣営はトウカイポイントを天皇賞に出走させる考えはやはり最初からなかったのかもしれないという気もする。
また、さらにトウカイポイントのプロフィールを付け加えるなら、彼はいわゆる「〇地馬」であり、トウカイポイントのことをがんばってひと言で表現するとしても、「〇父で〇地の騙馬でステイヤー血統のマイラー」という、非常にヤヤコシイ紹介文にならざるを得ない名馬なのである。
もちろんこのトウカイポイント、先にも触れた通り、後にマイルCSを優勝することになるわけで、しかも血統の印象からするとどうしてもマイルが最適なレースとは考えられないから、そんな適性も中途半端なGIで優勝してしまったトウカイポイントの潜在能力の高さというのは、ちょっと測り知れないものがあったと考えるべきだろう。
マイルCSの先頭ゴールを果たした直後、ファンが多かった父・トウカイテイオーの後継者になると、おそらくだれもが考えたはずである。
私など、トウカイテイオーどころかパーソロン直系のスターがここで誕生したということが非常にうれしかったものだ。
いや、おそらくこの系統の血を絶やしたくないと考えるファンであれば、特にメジロマックイーンの産駒成績が思わしくなかっただけに、誰だってそういう夢、期待をこのとき抱いたに違いない。
しかし、夢とは常に儚いものである。
私もこのとき本当にそれを痛感したものだ。
ゴール後、ほんの10秒ほどの大きな夢であったのだから・・・
あー、トウカイポイント・・・騙馬じゃん・・・
と。
もうひとつ、このトウカイポイントの特異性について触れよう。
先ほどもこの馬のポテンシャルは、その成績や印象以上に高かったのではないかということについて触れたが、トウカイポイントはGIIとGIのどちらも優勝していたのだから、おそらくこれは間違いではないはずである。
ただ、たいていそういう実力馬というのは、他の重賞もいくつか勝っているものだが、このトウカイポイント、実は勝った重賞はこのふたつだけなのである。
しかも、条件馬の当時から、成績に非常にムラがあり、中にはとてもではないけれどこの馬はこの先もう買えないという内容のレースもままあったほどだ。
オルフェーヴルの京王杯のように馬が若いという理由ではない、やや致命的とも思われるような負けっぷりを古馬になってから繰り返していたのがトウカイポイントである。
それが後のGI馬になるというのだから、競馬はわからないものである。
だから、ペルーサなんて今すぐこのトウカイポイントに師事すべきである。
まあそれもすべて「気性難」のためだったと思われるものの、そもそも気性難の馬がGIタイトルを手にすること自体、やはりかなり稀有な存在である。
近年ではオルフェーヴルがそうだが、ということは、やっぱりこのトウカイポイント、思われている以上にタダモノではなかったのではないかという思いは強い。
だからこそ、マイルCSのゴール直後に見た10秒あまりの夢はあまりにも大きすぎたのである。
トウカイポイントは現在16歳、気性難を見事克服して、なんと乗馬(馬術)として活躍しているというから、本当に競馬は奥深い。
競馬の奥深さを改めてあらぬ形で教えてくれたトウカイポイントには、長く乗馬で活躍し、そしていつまでも元気でいてもらいたいものだ。
