フェブラリーS テスタマッタ

レース回顧~嵌ったマッタ、強ぇええええ!/第29回フェブラリーS(GI)

前半と後半のそれぞれ4Fのラップは、前半が2秒速い流れであった。
岩田騎手はインタビューでややスベッタ感じだが、ハマッタ末脚を披露したテスタマッタは強かった。
折り合い、気性、その他アテにできないなど、力はありながらいろいろ言われ続けたテスタマッタが、その力を自ら証明してみせた。

この馬は嵌ると本当に強い。
表現はよくないと思うのだが、何か気がふれたような、狂気じみた直線の末脚であった。
もちろんタイプというか、キャラクターが本当に「アテにできない」というタイプだけに、ここでGIを優勝してしまったことで今後どんな影響がこのテスタマッタに果たして及ぶのか、この部分も実は注目だと思うのだが、しかし今日のところはあまりの強さにちょっと言葉を失ってしまった。

「内の岩田」の印象をすべて打ち消すような、力強い大外テスタマッタの競馬であった。
あと一歩のところまで迫りながら非常に痛い骨折があって、復帰してからの一連の内容から、テスタマッタの力強さはすでに過去のものとなってしまったかのように思われた時期も正直あった。
しかしこの勝利は、テスタマッタの不屈の精神というか、何か「敵は自分だけ」ということを自分自身悟ったような、そんな素晴らしい勝利であった。

アテにできない・・・そういうレッテルはおそらくそう簡単にははがれることはないだろうし、今後もテスタマッタはテスタマッタらしくあってもらいたいと強く思う。
「GI馬」なんていうプレッシャーや、私を含めた外野のヤジなんてハナっから無視してかかって、自分らしさをこの後も出し続けてほしい。
いやぁ・・・今日は本当に凄かった!

2着シルクフォーチュンは、こういう厳しい流れでもキッチリ追い込んで2着、敗れはしたが、この馬は成長のあとがハッキリと見て取れる、こちらも素晴らしい内容の2着であったと思う。
出遅れが少し響いたが、今日のところは仕方がない。

シルクフォーチュンの場合、根岸ステークスのようなスローの競馬で馬群から離れずに追走できることが条件になるかな、とも思っていたが、今日のような厳しい前半の流れでロスを最小限にとどめた藤岡康太騎手も、「どうせ追い込みだから・・・」と言葉で言う以上に好騎乗であったと思う。
それに、人馬とも府中は非常に合う。実はこれも大きかったか。

3着ワンダーアキュートは、いやぁ・・・私はもっと追走に苦しむのではないかという予感があったのだが、しかしだんだんレース内容が良くなっている印象で、これは本当に充実している。
馬体増は「太め」というよりもむしろ「充実」を示しているのではないだろうか。
近い将来、おそらくテスタマッタ、シルクフォーチュンとともに、ハイレベルのダート界を引っ張っていく存在になるのだろう。
今日のところは切れ味で2頭に劣ったが、これも内容としては現時点での力は出し切れているのではないか。

そして、毎度おなじみ・・・となっているのが4着ダノンカモン。
福永騎手は、目標を前に切り替えるのが少し遅れてしまったか。
人気のトランセンドの脚色から、もっと早く前に意識を向けていれば・・・とも思われる内容で、予想のところでちょっと触れた「イヤな予感」がピタリと当たってしまった・・・
しかしこれは惜しい競馬であったと思う。

直線は弾けんばかりの手応えで、さあここからスパートというときには、すでに「目標」は失速。
やや戸惑っている間にテスタマッタにアッというまに離されてしまったのは、ダノンカモンにとっては少し不運だった。
ただ、ダートのGIという相当ハイレベルなレースを制するのであれば、そうした多少の「狂い」もカバーできる底力、あるいはそれをむしろプラスに変えられるパワーを、このダノンカモンの今後に期待したいものだ。

そして、やはりどうしても触れなければならないのが、圧倒的人気のトランセンドだ。
芝の部分が長い外枠スタートが心配され、そしてもちろんその影響も多少はあったと思うが、しかし今日はトランセンド本来の行きっぷりではなかった。
もちろんこの原因には諸説考えられるだろうが、私は前走のジャパンカップダートのあの楽な逃げ切りが大きく影響しているのではないかという気がしている。

もともとがハイレベルなダートのオープン戦において、その頂点であるJCダートであんなに楽にハナを奪ってまったくのマイペースで運べてしまっては、それはトランセンドだって「生き物」なのだから、楽を覚えてしまうに決まっている。
身体を見る限り隙はほとんど感じられなかったから(それどころか、昨年の南部杯のほうがよほどつくりは緩かった印象)、今日は「ドバイを見据えての仕上げ」という感じではなかったように思う。

そもそも、この路線の陣営がここでそんなに楽な考え方であるはずがない。
なぜなら、この地位にたどり着くまで、それこそ血ヘドを吐くような厳しい競馬を繰り返してきたからである。
それが頂点に立つダートホースの定めであり、だからこそダート競馬はおもしろく、そして奥が深いのだ。

有馬記念のブエナビスタやトーセンジョーダンの競馬がどうであったか。
あれだけ厳しい競馬をしたあと、まったくペースが違う競馬にたいそう戸惑っていた「強いGI馬」の姿があったのは、まさにこれと同じ理屈であると私は思う。
これで気合を入れ直したトランセンド、足元が無事であれば回避などせず、昨年同様のチャレンジ精神で是非ドバイに向かってもらいたい。

それと、伏兵・ヒラボクワイルドのラストの伸びは一瞬目をひいたので、次走は要注意という気がする。